【マクドナルド】「ギガビッグマック」の魅力に抗えない中年男。
なぜ、ヒトは「大きなもの」に憧れるのか。
なぜ、「偉大」という言葉はあって、「偉小」という言葉はないのか。
「大は小を兼ねる」という言葉もあるとおり、ホモ・サピエンスの社会において「大きい」ことは美徳のひとつとされている。
「大きなもの」を打ち倒し、征服したとき、ヒトはいかなる喜びを手に入れるのか。
マクドナルドの広告代理店が考えたキャッチコピーは多分に扇情的で、「大きなものに挑んでみたい」という人間の本能的欲求を十分に心得ている。
2022年初夏に行われた「ビッグマック」キャンペーンの宣伝文句は、「ビッグマックなんて、ペロリだよ。」であった。
「ビッグマック」が期間限定で値引きされると同時に、通常の数倍サイズの「グランドビッグマック」および「ギガビッグマック」が販売された。
食べたよ!
食ったぜ!
ヒトビトはSNSを通じ、「大きなもの」を「ペロリ」と平らげたことを誇っていた。
なぜ、それが誇れることになるのか。
おそらく、大量の食物を摂取できることが、「健康」や「力強さ」といったイメージに結び付くからだろう。
一昔前にテレビなどで「大食い」が流行ったが、それを行う人びとは「フードファイター」と呼ばれた。闘う者である。
現代の食文化(の一部)にあっては、食物は、ともに喜びを分かち合う友ではなく、打ち倒すべき敵なのだ。
敵が強大であるほど、打ち倒したときの喜びも大きくなる。
それは生物として当然の反応だ。
すべての生物はそのようにプログラミングされている。
大きな喜びを手に入れようと、大きなものに魅かれてしまうのは、すべての生物の性(さが)なのである。
僕も一個の生物であり、煽られたら簡単に乗せられてしまう。
分かっちゃいるけどやめられない、ってヤツですね。
馬鹿ばかしいなぁとは思いつつも、やっぱ、食えるかどうか試してみたくなっちゃった。
大企業のマーケティングはすごいなぁ。
もちろん、「ペロリ」と平らげた。
マクドナルドも考えて、あくまで「一般的な成人が食べられる大きさ」に留めているのだろうから、「ペロリ」と食えるのは当然の話ではあるのだが。
僕はどちらかというと小食な方なので、普通の中年男ならば苦もなく食いきれると思う。
味について。
パッケージに「4×4」と書かれていた。それが意味する正確なところは不明なのだが、とりあえずパテが4枚入っているらしい。
圧倒的に、ソースが足りない。
パテ(肉と塩こしょう)の味しかしない。
マクドナルドのハンバーガーはパテ自体が特別においしいわけではないので、ソースやチーズなどのパテ以外の材料の分量が相対的に少なくなると、全体としての味のバランスが壊れる。
パテの量を多くするなら、パテ自体をうまくするか、ソースやチーズなども増やし全体としてのバランスが崩れないようにして欲しかった。
そのようなわけで、通常のビッグマックと比べると格別にうまいわけでは決してない。
やはり、今回の商品は「ペロリ」と食ったという結果が重要なのであって、味わうという過程にはあまり重きは置かれていなかったのだろう。
とは言え、それは通常のビッグマックと比較したときの話で合って、決しておいしくないわけではない。
余裕で倒せる敵だと思うので、是非、孤独な中年男の皆さまもギガビッグマックに挑戦されたい(煽り)。