【サボテン日記】ジェシーに仲間が増えた。
今夏、僕はサボテンを育て始めた(詳細は過去記事参照)。具体的には、週に一回程度、水やりをしている。つまり、ほとんど何もしていない。
何もしなくとも――親(僕)が限りなくネグレクトに近くとも――サボテンは育つ。いや、正直、育っているかどうかは微妙だが、死んで(枯れて)はいない。
サボテンのジェシーは、僕の掌で握り潰せそうなほど小さいのに(棘がブッ刺さって痛そうなので実際はそんなことしないけど)、既に、ほとんど自立している。親(僕)の援助をほとんど必要としていない。体内に蓄えた水分と、太陽光という自然の恵みだけで、ほとんど生き長らえている。充足している。
ジェシーだけではない。植物は、皆そうだ。生まれたときから、独りで自立して生きている。
考えてもみよ、人間なんかが慰み物として植物を広大な大地から引っこ抜き、屋内に持ち込んだりしなければ、水ですら雨がもたらしてくれる。
彼らは、生まれたときから、自己の生に必要なものをすべて揃えている(光、水、二酸化炭素、大地)。彼らは独りで充足しており、他の植物の助けなど求めていない。
親の援助がなければ育つこともできない脆弱な人間とは違う。「配偶者や恋人や友人がおらず孤独だ」などと呟いて鬱になる脆弱な人間とは違う。他者の承認がなければ充足した人生を歩めない脆弱な人間とは違う。
そういった意味において、植物はリスペクトすべき崇高な存在だ。
なあ、そうだよな?
ジェシー?
僕は念波的なアレで、サボテンのジェシーに語りかけた。
ジェシーは念波的なアレで僕に答えた。
《当たり前じゃねえか。植物たる者、生まれてから死ぬまでずっと独りさ。それで平気よ。お前らみたいな人間とは違うんだ。
俺ァ、お前さえいなくたって、少しも寂しくなんかないんだぜ?》
ジェシーひでえw 俺は、ジェシーがいなくなったら寂しいけどな。誰かから必要とされるっていうのは、たとえそれが植物でも気分がいいものだし。
《……おいおい、お前。気色悪ぃコト言うなよ》
……。
《チッ。しゃーねーな。
俺もちょっとは寂しいぜ。お前が会社に行ったときなんかな。
この部屋には俺以外に、動物も植物も人間もいないから》
ホントか~?
《ちょっとだけ、な。ほんの少しさ。我慢できねえって程じゃねえよ》
そのような訳で、ジェシーが露骨に寂しそうだったので、サボテンの仲間を新たに購入することにした。
サボテン同士の方が念波的なアレもうまく周波数を合わせることができるだろう。
今回、買ってきたのは、以下の二つのサボテンだ。
「ミシェル=ポザンナ」と名付けた。両方とも名前だ。おそらく、女。
女神か悪女かは、今のところ、分からない。
「ダニー」と名付けた。背の高さからして、男だろう。
こいつは善人(善植物)に違いない。「ダニー=善雄」と名付けても良かったのだが、「ヨシオ」という名の悪人が身近にいたので、「ダニー」だけにした。
(※ダニーは既に死んだ。つい数日前、鉢ごと机の上から落としてしまった。背が高いことが災いして、ポッキリ、折れた。二つに折れたうち上部をもう一度鉢に植えてみたが、普通に枯れた。申し訳ない……ダニー! そのような訳で現在、我が家には、ジェシーとミシェル=ポザンナの二人がいる。二人は恋人ではない)