「せみ餃子」は関西マイナー商品だったらしい。【餃子】【節約料理】
マンションの共用廊下にセミの死骸が転がっていた。
長雨が続く8月半ば、初めて1匹目を見つけた。
日を追うごとに、死骸は増えていった。
9月に入るころには、セミの亡き骸を踏まずして、玄関先からエレベーターまでたどりつけないほどだった。
共用廊下がセミの死骸に埋め尽くされていた。
靴底で踏みつぶすたびに、それらはパリッと小気味よい乾いた音をたてた。
よし、「せみ餃子」を食べよう。
と僕は思った。
「せみ餃子」は、庶民ならば誰でも知っている格安チルド餃子である。
どのスーパーにも置いてあって、だいたい86円くらいで売っている。10個入りだ。

商品名は、メーカーの社名が「珉珉食品(みんみんしょくひん)」であることに由来するらしい。
焼き上げたときのかたちがセミに似ているとか、具材にセミのすり身が使われているとか、名前の由来については諸説あるらしいが、それらは偽言である。
普通の、チルド餃子である。
中身の餡に、豚肉のほか、羊肉や馬肉が用いられており(パッケージの原材料一覧に明記されている)、なんとなく格安である理由は分かる。
僕が幼少期のころから、さして変化することなく「せみ餃子」は存在し続けており、一般大衆の根強い支持を窺わせる。
それはいつの世も、庶民の味方として、圧倒的メジャー商品であり続けている。
ーーと、今日までは思っていた。
この記事を書くにあたって「せみ餃子」について一応軽く調べたのだが、なんと、驚くべきことに、「せみ餃子」が「主として関西限定のマイナー商品」だったということが発覚した。
他の地域では基本的に売っていないらしい。
えっ。
マジでぇ?
「かんさい でんきっ ほ〜あんきょ〜かいっ♪」と同じ、ローカルな存在やったんかいな。
しかし、まあ、「せみ餃子」は「マズくはない」が「めっちゃウマい」というほどでもなく、「価格のわりにはウマい」という「コスパの良さ」がほぼ唯一の利点であることを考えると、関西でのみ息長く支持されてきたことも理解できる。
んで。
今回は、その「コスパの良さ」を最大限に活用し、餃子を大量消費しようと思った。めっちゃ食ってやろうと思った。
儚い一生を終えたセミたちへの供養として、夏の終わりに「せみ餃子」を食うのだ。



皮を「パリッと」焼き上げる
ことを強くおすすめする。
実食。
ふむ。
「マズくはない」が「めっちゃウマい」というほどでもなく、「価格のわりにはウマい」。
ウマさの質は、常に安定している。
餃子の皮は小麦粉、すなわち炭水化物なのであるし、具材には肉も野菜も使われているのであるから、「せみ餃子」の大量消費のみで、腹が膨れるばかりか、必要最低限の栄養素も摂取できる。
一般庶民御用達のスーパーフードと言える。

ビールは「キリン一番搾り」、
第3のビールは「サントリー金麦」と
なんとなく決めていたが、
現在、いろんなメーカーの
いろんなビール系飲料を飲んでみよう
という裏企画をひっそり進めている。

