【アニメ】今期アニメはスポーツが熱い! 『弱虫ペダル』『ベイビーステップ』『ハイキュー!!』『ピンポン』

 今期アニメはスポーツが熱い。
 僕をはじめとして孤独な負け犬系男子はウェーイな体育会系が非常に苦手であるが、現実のスポーツ界を物語として昇華し美しく描いたスポーツアニメは愉しく鑑賞することができる。

 今期、スポーツをテーマにしたアニメで「僕的秀作」が多かったので、以下、紹介していこうと思う(4作品)。孤独な負け犬系男子でも楽しめるラインナップとなっているはずだ。

①『弱虫ペダル』

 まずは、『弱虫ペダル』(公式サイト http://yowapeda.com/index.html)を紹介せずにはいられまい。

 題材は自転車競技(ロードレース)である。
 負け犬系男子の心をガッツリ掴むべく、主人公・〈小野田坂道〉をアニメオタクの気弱な高校生として設定した点がポイントだ。負け犬系男子たちの心理的抵抗を減らし感情移入させることに成功した。

 〈小野田坂道〉は、少しでも多くのアニメグッズを購入すべく、電車賃を節約し、自宅と秋葉原の往復90㎞の距離をママチャリで行き来していた。自転車競技に必要な脚力を、そうして自然と身に付けていたのである。
 高校生となった〈坂道〉は、校舎へと続く急勾配の坂をママチャリで駆け上って通学していた。そして、ある日、その坂で自主練を行っていた天才高校生ロードレーサー〈今泉俊輔〉を、ママチャリで追い抜いてしまうのである。ある理由から自転車競技では絶対に誰にも負けないと固く心に誓っていた〈今泉〉に、〈坂道〉はクライマー勝負を挑まれ、次第にロードレースへの楽しさに気づいていく……。

 全国屈指の自転車競技部に入部し、人生で初めて仲間との連帯感や友情を感じ、試練や挫折を乗り越え、成長していく〈坂道〉。
 単なるアニメオタクであった坂道が、一年生にして強豪チームのレギュラーとなり、インターハイにまで出場することになるのだから、まさに“漫画のような”負け犬系男子のサクセスストーリーと言っていいだろう。しかも、その成功を無理なく演出している裏付けが、「子どもの頃から秋葉原までママチャリで通っていた」という事実なのだから、視聴者の負け犬系男子たちもケチを付けづらい。
 「孤独なアニメオタク」という負のキャラクターを、アニメオタクという特性は残したまま、いや、むしろそれを巧く使って、自転車競技というスポーツと結び付けるすることにより、「仲間と共に成長していく男子高校生」へと昇華させた。
 孤独な負け犬系男子が共感せずにはいられない物語となっている。

②『ベイビーステップ』

 『弱虫ペダル』にも見られた、一見して無意味とも思える特性が実は強みになるという法則は、次に紹介する『ベイビーステップ』(公式サイト http://www9.nhk.or.jp/anime/babysteps/index.html)でも同様である。

 こちらは、テニスを題材にしたスポーツアニメで、主人公は真面目なガリ勉高校生・〈丸尾栄一郎〉である。
 〈栄一郎〉は極めて几帳面な性格で、彼がまとめた授業ノートは通称「エーちゃんノート」と呼ばれ、その正確さ・分かりやすさは学年でも有名だった。
 そんなある日、彼のノートを貸して欲しいと、別のクラスの女子生徒・〈鷹崎奈津〉が〈栄一郎〉の元を訪れる。彼女は、プロを目指して、全国区でも活躍するテニスプレイヤーだった。彼女に誘われ、体力維持のために軽い気持ちでテニスクラブを訪れた〈栄一郎〉は、テニスの奥深さに嵌っていく。

 栄一郎の特性は「真面目」であり、その象徴が「ノート」である。彼はテニスでも、練習メニューやコーチの助言、試合の流れや相手選手の特徴などをノートに逐一書いていく。そこから、勝利への鍵をあくまで論理的に見出していくのである。そこが面白い。
 『ベイビーステップ』では、「真面目」という特性に加えて、「動体視力が優れている」という天賦の性質も〈栄一郎〉に与えられてしまっているので、『弱虫ペダル』ほどのカタルシスは得られないが、「ガリ勉」「生真面目」という一見して負の特性を活かして、強豪ライバルたちに勝利していくさまは、負け犬系男子の心を鷲掴みにする。

③『ハイキュー!!』

 短所は時に長所ともなる。しかし、短所は短所でしかないこともある。バレーボールというスポーツにおける背の低さも、その一種だろう。背の低さは、どう転んでも短所にしかなり得ない。それが「ミドルブロッカー(センター)」という高さが求められるポジションならば、なおさらだ。
 しかし、自分だけで短所が克服できないのならば、仲間の力を借りればいい。仲間の力を掛け合わせることによって、自分の短所がカバーできるばかりでなく、自分一人だけでは到底生み出せない爆発的な強力な武器を獲得できることさえある。

『ハイキュー!!』(公式サイト http://www.j-haikyu.com/anime/index.html)は、そんなアニメである。
 前者2本のアニメとは異なり、バレーボールという「チームスポーツ」を扱っているところがポイントである。

 負け犬系男子は、組織や集団といったものになじめないからこそ孤独に陥る。その一方で、「友情」や「仲間」といった概念には強烈な憧憬を抱いている。それらは望んでも手に入らないものとして存在する。
 だから僕らは、アニメや小説の中に夢を見るのである。
 「週間少年ジャンプ」の三大要素の筆頭に「友情」が掲げられていることを忘れてはならない。「努力・勝利」がもたらすカタルシスと共に、現実で体験することが困難な「友情」という概念を負け犬系少年たちに与えることが漫画やアニメの役割である。

 さて、『ハイキュー!!』の主人公・〈日向翔陽〉は、小学生の頃、たまたまテレビの試合中継で見た〈烏野高校〉男子バレー部の“小さな巨人”という選手に憧れを抱き、中学入学と同時にバレーを始める。
 だが、入学した中学には男子バレー部が存在しなかった。〈日向〉はめげることなく、たった一人でバレーの練習を続け、中学三年になって初めて、他の部活に所属する友だちを誘ってなんとか大会に出場する。が、その初めての公式試合で、強豪チームに大敗する。
 中学を卒業し、憧れの烏野高校へと進学した〈日向〉だったが、入部した男子バレー部には、中学三年の試合で〈日向〉たちを完膚なきまでに叩きのめした強豪チームのセッター・〈影山飛雄〉も新入生として入部していた。
 〈日向〉の抱える難点は背の低さだった。スパイクを打っても、相手のブロックに阻まれてしまう。バレーボールというスポーツにおいて背の低さは決定的な弱点だ。稀有な運動能力を持ち、人一倍努力家でもある〈日向〉だったが、背の低さだけはどうしてもカバーできなかった。
 一方、〈影山〉も、他の同年代のセッターを凌駕する優れた技術を持っていたが、彼の素早いトスに付いていけるアタッカーはいなかった。〈影山〉は、中学時代、全国出場をかけた決勝戦で、味方アタッカーが到底打てないような素早いトスを何本も上げ続け、アタックミスを出す彼らを大声で叱責し罵倒した。そうして、チームメイトの心は〈影山〉から離れていき、チームは〈影山〉とその他のプレイヤーとの間で分断されてしまう。結果、試合にも負ける。
 そんな挫折を経験してきた二人が、高校で運命の出会いをするのである。
 中学時代の因縁で最初は反目する二人だったが、入部をかけた上級生たちとの練習試合で、〈日向〉と〈影山〉は奇跡的なコンビを繰り出す。〈日向〉の俊敏な移動攻撃に、〈影山〉が素早いトスをピタリと合わせたのである。相手のブロッカーは、二人の攻撃に付いていくことができなかった。低身長の〈日向〉が相手コートにジャストミートのスパイクをぶち込んだ、初めての経験だった。

 『ハイキュー!!』の物語的ギミックは上述のように明快である。「友情による弱点の克服」だ。
 もともと判官贔屓の負け犬系男子たちに、そこへ加えて「友情」という餌を与え夢を見させるアニメだ。

④『ピンポン』

 最後に、以上3作品とは少し趣向の違うスポーツアニメを紹介したい。『ピンポン』(公式サイト http://www.pingpong-anime.tv/)である。
 この作品の原作は、週刊ビッグコミックスピリッツに掲載された。この漫画雑誌は青年漫画雑誌である。一方、前者3作品の原作はそれぞれ、チャンピオン、ジャンプ、マガジンという少年漫画雑誌への掲載だ。毛色が異なるのは当然のことだろう。

 原作のアーティスティックな作風をそのまま投影しているのか、作画は一般的なアニメのそれとは大きく乖離している。意図的に多用されるコマ割や、粗暴な描線などは、漫画をそのままテレビ画面に映しこんだかのようで、それが反って新鮮である。試合シーンなどは、物語性がなくとも、描写だけで大人の鑑賞に耐えうる出来になっていた。

 また、題材はタイトルの示す通り卓球であるが、別に卓球である必然はないかもしれない。各登場人物たちのバッグボーンを物語として描くことに重点の置かれたアニメだからだ。
 彼らの抱える背景が試合においてぶつかり合う。ぶつかり合いさえすればいいのだから、個人種目のスポーツであればいい。
 ただ、あえて、卓球という地味な種目を選んだところが、またも粋という感じがする。テニスのように太陽がさんさんと輝く青空の下というのは、作品の雰囲気に合わない。照明だけの仄暗い体育館が、この作品には合っている。
 各登場人物の背景(物語)を重いトーンで描くことによって、そのぶつかり合い(試合)も重みを増し、作品は大人の鑑賞にも耐え得る深さを手に入れた。

 普段はスポーツアニメなど滅多に見ないが、今期は見るべき作品が珍しく複数本あったので、まとめて紹介してみた。
 負け犬系男子の皆さんも時間があれば、是非、見て頂きたい。

(※この記事は旧ブログからの移管記事です。2014年春up)

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