【独身男のクリスマス】ケーキとチキンを勘で作る。【ケーキ編】


 12月前半、怒涛の歳暮攻撃があった。孤独な中年男の僕は私的な人間関係が皆無であるから、要は、仕事関係の年末の挨拶である。その贈答品の内容が偏り過ぎていた。列挙しよう。

・バウムクーヘン(ワンホール)
・バターカステラ(1本)
・かりんと饅頭
・モロゾフの焼き菓子(フロランタンにチョコ)
・風月堂のゴーフル(3種)
・海鮮せんべい

 ざっと思い出せるだけでもこれだけある。全部、菓子だ(しかもほぼすべて甘いやつ)。
 特に上記2つは4人分くらいの量があり、賞味期限も短かった(いずれも会社ではなく、あくまで僕個人にいただいたもの)。

 貧乏性の僕が、食いものを捨てるなど、できようはずもない。
 意地で食い切った。朝食が菓子とコーヒーだけという日が、数日続いた。

 甘味天国(あるいは、甘味地獄)を乗り越えて、そして、迎えた2022年のクリスマス。

 例年通り、近所のケーキ屋は軒並み予約が埋まっていた。ケーキを買うとなるとスーパーかコンビニとなってしまうが、菓子の大量消費を終えた今、僕は、それを食べたいか?
 自問した。

 即、答えが出た。

 要らんわ。
 今年はクリスマスケーキ、要らん。

 独身男のクリスマスなど「ケーキを食べる」くらいしかイベントが発生しないので、それをせずにいたら、24日及び25日はまったくもって通常の週末として過ぎ去った。特別感は一切なかった。

 そして26日となり2022年最後の1週間が始まり、数日後、仕事納めを終え、年末年始の長期休暇が始まった。
 時間ができた。
 菓子の大量消費からも1週間程度は過ぎていた。

 やはりクリスマスのチキンやケーキは、「縁起物」として食べておいたほうがいいのではないかー-との思いが芽生えた。
 なんか食っとかないと神の祝福を受けられないような気がする(クリスチャンでもなんでもないが)。

 5日ほど遅れたが、僕は、例年どおり「ぼっちクリスマス」を愉しむことに決めた。

焼き菓子は要らない、ムースケーキにしよう。

 クリスマスケーキを食べることにしたが、焼き菓子(スポンジやタルト)は当分の間、口にしたくなかった(冷静に考えると、かなり贅沢な悩み)。

 気分的には、ゼリーやプリン、ヨーグルトといったさっぱりしたスイーツを食べたかった。
 しかし、それらをいくら飾り立てたとて「クリスマスケーキ」とは呼べないのは明白だった。

 そこで僕は「ムースケーキ」を作ることにした。スポンジケーキやタルトに比べれば、圧倒的に軽い。

 買わずに自分で作ることにした理由は、2つある。

 1つ目は、ケーキのほぼ100%をムースで構成したかったからだ。
 洋菓子店のムースケーキは、スポンジやタルトの部分が相対的に多い。全体のバランスを考えてそのように構成されているのだろうし、ムースの味が引き立つようスポンジやタルトにも特別なフレーバーが加味されていることが多い。しかし、とにかく、その時の僕は「焼き菓子的なもの」を極力食べたくなかった。

 2つ目は、ムースの味も可能な限りさっぱりさせたかった(甘くしたくなかった)からだ。
 砂糖の使用量を減らし、甘さを市販品の半分程度に抑えたかった。
 また、ムースのベースも酸味の強い果物が望ましい。クリスマスを過ぎてもスーパーの店頭にはいちごが多く並べられていたが、僕としてはいちごでも酸味が弱い。カシスがベストだったのだが、通常のスーパーでは売ってない。
 ひらめいた。
 ラズベリーだ。フランボワーズだ。木いちごだ。

 甘さを極力控えた「ラズベリーのムースケーキ」を自分で作るのだ!

調理開始!

 材料を買いに出かけた。

 ラズベリーの購入先は決まっていた。業務スーパーである。
 冷凍食品のラズベリーが500円くらいで売っていて、一時期それにハマっていた。砂糖と煮つめてフレッシュジャムを作り、パンやホットケーキに塗ったり、ヨーグルトに混ぜたりして食っていた。いちご(冷凍)より値段は高いものの、その分、酸味や風味も強く感じることができた。
 しかし久しぶりに店頭で値段を確認すると、700円くらいに上がっていた。インフレの影響だろうか。まあ、関係ない。冷凍なので腐らせる恐れもないから、躊躇なく購入した。生のいちごを買うよりも安い。

 ケーキの土台部分となるスポンジも業務スーパーで購入する予定だった。
 しかし、スポンジは無駄に大きかった。値段は安かったが、量が多すぎる。
 こんなに要らんのになぁ、と思っていたところ、僕の目に飛び込んできたのが「台湾カステラ」であった。
 薄くスライスしたら「スポンジ」も「カステラ」も大して変わらんと思い、「台湾カステラ」を購入することにした。都合のいいことに、円型だ。しかも、僕が持っているケーキ型の大きさと丁度同じだった。完璧だ。
 「台湾カステラ」は業務スーパーのお気に入り商品のひとつで、既に何回も食っており、そろそろアレンジ(味変)をしようとも思っていたので、ちょうどいい。(主役はあくまでムースとなるが。)

 また、洋菓子店のムースケーキ(ベリー系)は、バニラやチョコレート、紅茶、コーヒーなどのムースやソース、生地と組み合わされることが多い。というか、それしかない。純粋な「果実のムース」だけという商品はない。
 だからこそ、「ラズベリームース100%ケーキ」を当初はつくる予定だったのだが、やっぱりすこしはアクセント的な? 隠し味的な? そういうものがないとマズいのかしらん? という気がしないでもなかったので、「カステラ」にインスタントコーヒーを薄くふりかけることにした。
 こちらのインスタントコーヒーも業務スーパーで購入したものだ。「ヘーゼルナッツフレーバーコーヒー」という珍しい商品だったので以前に購入していたものだが、常用には適しておらず、なかなか使い切れないでいたので、使っちゃおうと思ったのだ。ぶっちゃけ、減らすことが目的だった気がしないでもない。

 調理の過程は大きく3つに分かれる。

(1)ラズベリーのピューレをつくる。

 冷凍ラズベリーを砂糖と水で煮つめ、果実をフォークでぐちゃぐちゃにつぶし、ピューレをつくる。
 本物のピューレをつくろうと思ったら、ミキサーやブレンダーなどが必要になるのだろうが、我が家にはそんなものはなかった。
 しかし、それでいい。
 ここが重要なところだ。
 僕がなぜ、業務スーパーの冷凍ラズベリーに一時期はまったかというと、風味はもちろんのことながら、その「種のプチプチとした食感」が好きだったからだ。
 種を極力つぶしたくなかったので、ミキサーなど不要だ。
 そして、市販のラズベリームースは綺麗に処理されたピューレを利用しているので、ムースの中に「種」は一切入っていない。この点も、自分でつくろうと思った理由のひとつだ。

 上にかける化粧ゼリー用のピューレに関しては、さすがに茶こしを用いて種を取り除いた。めちゃくちゃ綺麗な赤色だった。

(2)ムースをつくる。

 ピューレ(種入り)を泡立てた生クリームやゼラチンと混ぜ合わせて、ムースをつくる。
 タイトルにも「勘」でつくったと明記したが、ケーキに関して言えば、主として「分量」のことである。
 レシピをいくつか調べたが、逆に、”訳ワカラン”状態に陥った。材料が合っていれば、分量に多少の誤差があっても味にさほどの変化もないだろうと思った。
 あえて言えば、あくまで「ムースケーキ」にしたかった(「カップムース」にしたくなかった)ので、ムースが自立するようにゼラチンを多めに(自分基準で)入れたことくらいだ。

(3)ケーキを組み立てる。

 薄くスライスした「台湾カステラ」を土台に敷き、「ヘーゼルナッツフレーバーコーヒー」の粉をふりかけ、ムースを流し入れ、化粧ゼリーを流し入れた。

 あとは、しばらく冷蔵庫で冷やすだけだ。
 そして、型から取り外した。

実食。

 一部取り分けておいた生クリームとラズベリーでデコレーションを施し、こうして、勘でつくった「僕流・ラズベリームースケーキ」が完成した。
 見た目は自分でも及第点だった。


 問題は味である。

 マズくはない。

 マズくはないが、成功か失敗かで問われると「失敗」と答えざるを得ないだろう。
 食った瞬間に「うまい。おいちー」という感想が出てこなければ、それは「失敗」なのだ。


 振り返って考えるに、失敗の要因は、次の通りだ。

①「ヘーゼルナッツフレーバーコーヒー」が邪魔。
 洋菓子店のパティシエは、ムースに合う食材を慎重に選定しているのだろう。隠し味とかいってテキトーな材料を用いても、ムースの風味を阻害するだけだった。

②「台湾カステラ」が卵臭い。
 不思議だ。単独で食べるとあんなに美味しい「台湾カステラ」なのに、ムースと合わせると、その蒸しパンのような「卵臭さ」が気になった。

③ゼラチンを入れ過ぎた。
 型からきれいに取り出せるようにとチキって、明らかにゼラチンを入れ過ぎた。
 硬い。
 写真の断面を見てもらっても分かると思うが、泡も少ない。
 これはもう「ムース」というより「ゼリー」だ。
 ムース独特の、「ふわふわ・じゅわじゅわ」という食感が著しく乏しい。

 失敗の要因を自分でもはっきりと認識しているので、改善点も明確だ。

①余計な材料は使わない。
②「カステラ」ではなく「スポンジ」を使う。
ゼラチンを少なめにして柔らかくする。同時に、気泡を多くする手立てをとる(ネットで「ムース 硬い」で調べると、「イタリアンメレンゲ」を混ぜ合わせると「ふわふわ・じゅわじゅわ」になるとあった)。

 以上だ。

 ③の改善点はあるが、ムース部分は「どちらかというとうまかった」(うまい51 対 49まずい)。
 動物性生クリームのコク、ラズベリーの風味(酸味)、種のプチプチ感。
 硬かったことは硬かったが、まあ、ムース部分は及第点だ。
 その他の改善点に関しては、余計なことをせずにスタンダードな手順を守ればいいだけだろう。

 次回ムースをつくる際は、上記の改善点を必ず試すつもりだ。(後日、自分で検索しやすいように、あえて「ケーキ」と「チキン」で記事を分けた。)

 2022年のクリスマスケーキは以上となる。
 クリスマスチキンも「勘」で作ったので、次回はその報告を行う。


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