【社労士試験】合格発表!速報!【独学合格体験記12】

サクラサク。
桜咲く。
2023年10月4日9:30。
社会保険労務士試験の合格者発表が、オフィシャルサイトにて行われた。
一刻も早く結果を知りたかった僕は、自宅にてその時を待っていた。
某予備校のX(旧ツイッター)アカウントが、9:30を待たずとも8:30に「インターネット官報」にて合格者番号を確認できるとポストしていたが、それは誤りだった。今年からは、9:30のオフィシャルサイトでの合格発表が最速の発表となったようだ。
スマホの時刻が「9:29」から「9:30」に切り替わった瞬間、オフィシャルサイトへのアクセスを試みた。
案の定、「回線混雑」によりページは表示されなかった。
この時をじりじりしながら待っていた数万人の受験生が、殺到しているのだろう。
何度か試みて、やっと繋がった。
都道府県別で「大阪府」を探し、自分の受験番号を探す。
あった。
受験票の番号と何度も見比べる。パソコンの画面を拡大表示する。
間違いない。
僕の受験番号は、確かにパソコンの液晶画面に表示されていた。
マークミスしてなかった~、よかった~。ホンマによかったあああああ。
と思った。
歓喜より、安堵の気持ちの方が圧倒的に強かった。
合否の崖っぷちに立たされても、合格さえすれば、うれしさで天空に舞い上がるかと思っていた。崖の存在など忘れて、意気揚々と浮かれまくるかと思っていた。
違った。
もう絶対に落ちることはないと分かっても、僕はやはり崖っぷちに立っていて、崖下を覗き込んでいた。そして、「落ちなかった。落ちなかったんだ」と呟いている。
崖下を覗き込んで見える景色は凄惨だ。
落ちていく人びと。
必死に手を伸ばすが、その手はなにも掴まない。
なにかを手に入れるには、また、1年もの間、崖を登り続けなければならない。
頂上付近で、また、滑り落ちるかもしれないのに。
想像しただけで、みぞおちのあたりがぞわぞわする。
圧倒的恐怖である。
今は、崖の上で手に入れた宝玉を嬉々として検分するより、崖から落ちる恐怖から解放されたという事実にただただ安堵している。
荒い息を吐いて、「落ちなかった、落ちなかった、落ちなかった」と呟き続けている。
脳内で連呼されている言葉は、「受かった」ではなく、「落ちなかった」だ。
社労士試験は、薄氷の張った広大な湖を彼岸まで渡り切るのに似ている。
薄氷を踏みぬくか否かは、ぶっちゃけ、運だ。
択一式試験で60点を超える(つまり9割近く正答する)猛者であっても、選択式の1科目で基準点に1点足らず落ちることがある。多々ある。
自分の踏んだ、その場所が、たまたま特に氷が薄かった。あるいは、見えない亀裂が走っていた。
それだけで、氷は瞬時に割れ、その人は冷たい水の中へと落ちていく。
僕は運がよかっただけだ。
選択式の厚年法あたりで、僕はもっとも危険に接近していた。
右足と左足、どちらを踏み出すかの判断を誤っていたら、薄氷の割れ目を踏みぬいて、湖の底に沈んでいたかもしれない。
僕とまったく同じ境遇で、左足と右足を間違えた人がYouTubeで動画を上げていた。
僕のすぐ後ろを歩いていたその人は、音もなく、落ちていった。彼が消えたことにそのときの僕は気付かず、薄氷の上を歩み続けた。
対岸に辿り着いた今、湖を振り返って、自分が九死に一生を得たをことを知る。
あっぶね、あっぶね、ギリギリやん、ギッっっリギリやん! 薄氷すぎやろクソが!
と僕は天に向かって叫ぶ。
崖の上に、あるいは、薄氷の湖の対岸になにがあるのか。
それは、合格証書と一緒に郵送されてくるという案内を読んでからじっくり確認したいと思う。
今はもう、安堵しかない。

