【映画】「川の底からこんにちは」(満島ひかり主演)を観た感想。

がんばらなきゃ、しょうがない。



 世の底辺人たちから大喝采されること間違いなしの秀作
 作中歌である「木村水産 社歌」は、現代のラ・マルセイエーズになり得る(youtubeでも視聴可能)。

 〈来るなら来てみろ大不況 その時ゃ政府を倒すまで 倒せ倒せ政府〉

 という過激な歌詞も含まれているが、歌の本質は、社会の底辺に生きる人々を応援することにあろう。ラ・マルセイエーズだって革命歌であると同時に、市民を鼓舞し勇気づける応援歌だった。だからこそフランス国家なり得たのだ。

 満島ひかり演じる主人公〈木村佐和子〉の口癖は「しょうがない」だ。この言葉への印象が、冒頭とラストで180度転換するはずだ。マイナスのものからプラスのものへと。
 現状への安易な肯定や無気力を表す言葉が、現状を変革していくことでしか生き抜くことはできないという“覚悟”を表す言葉へと変容していく。
 若干ネタバレになるが、〈佐和子〉の「しょうがない」には、その前に「頑張らなきゃ」という言葉が付随しているように思われる。

「アンタも私も大した人間じゃないんだから、頑張らなきゃしょうがないんだからね」

 本作のテーマはこれだけだ。
 この単純極まりないメッセージを伝えるためだけに、監督の石井裕也がどのような脚本・演出を用意しているのか。それは是非本編を実際に観て欲しい。笑いありエロありだから、中高生でも楽しんで観られるはずだ。

 日本はかつて「一億総中流」と呼ばれた。しかし、その「中流」の生活は、人々の必死の努力によって築き上げられたものだ。嫌々ながらも頑張ったからこそ、なんとか「中の下」の生活を手に入れることができた。決して高度成長期だけが要因ではない。アッパークラスだけが努力してきたのではないし、貧困層だけが苦しい思いをしてきたのでもない。「中の下」の人々だって必死に生きてきたし、生きている、のだ。
 この映画が発するメッセージに対し、僕ら受け手は、〈佐和子〉の義理の娘となった幼稚園児みたく素朴に、ウン、と頷くに違いない。
 そして、また明日からいっちょ頑張るか、という気持ちに自然となっているに違いない。

 キャストやスタッフについて。
 改めて思った――2010年前後の満島ひかりは、痩身の容姿とは対象的に、脂がのりまくっているなあ、と。間違いなく最上級の食材だ。ある種の作品においては、彼女の代役となり得る女優は存在し得ない。
 彼女が出演する作品は合計して10本ほど観ているが、その中でも次の5つは至上の作品だった。

  • 映画「川の底からこんにちは」(2010年 監督:石井裕也) 主演・佐和子 役
  • 映画「悪人」(2010年 監督:李相日) 石橋佳乃 役
  • 映画「ラビット・ホラー3D」(2011年 監督:清水崇) 主演・今里キリコ 役
  • ドラマ「それでも、生きてゆく」(2011年フジテレビ) 遠山双葉 役
  • ドラマ「Woman」(2013年 日本テレビ) 主演・青柳小春 役


 監督の石井裕也は、この作品を撮った当時、20代半ばの青年だった(1983年生まれ)。すごい。この一言に尽きる。
(ちなみに、石井裕也は満島ひかりの元配偶者である。)

 なお、「木村水産 社歌」(正確には、「社歌 Ⅱ」)は当分、僕のヘビロテとなる。

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