【日常】近所の公園で花見2020を開催した。参加人数1名。

 春が訪れる前に新型コロナウイルスの襲来にさらされた我々は行楽の自由を剥奪されたのであった。 満開の桜を愛でるべく遠出でもしようものなら「自粛警察」を名乗る人々に石礫を喰らわされ重傷必至とのことであった。ビビった僕は桜の名勝へと足を延ばすことを諦めた。
 口惜しや~。
 僕は感染者数の増加を連日伝えるテレビジョンに向かって呟いた。白髪の専門家が僕の呟きに都合よく答えた。

「近所の公園や河川敷を散歩することが『3密』に該当しますか?(反語) しないでしょうね(断言)。 健康維持の為にもそれくらいならば、むしろいいことではないかと、こう思うわけであります(推奨)」

 アハン、なるほどな。もっともだ。

 てなわけで、散歩がてら近所の公園に赴き美麗に咲き誇る桜をじっくり鑑賞することと決意した。
 公園の近くを不要不急ではない用事で通行する際に何本かの桜の大樹が満開を迎えたことを僕は知っていた。今日は公園の中に侵入し、それを間近で見ようと思ったのだった。

 「自粛警察」を恐れるチキンの僕はキチンとマスクをして公園へと向かったわけだが、着いたら、ベンチで老人や親子連れが何か食ってたし飲んでたし笑ってたし「サクラきれいネー」とか言ってた。

 あ。これ、普通に花見してるやん。と僕は思った。

 手ぶらで来たことを激しく後悔した。すぐさま来た道を引き返しスーパーで飲食物を購入し舞い戻ってきた。
 空いているベンチにつかつかと歩み寄り、どっかと腰を降ろした。それぞれのベンチの間隔は2mちゃんと離れてた、と思う。知らんけど。

 ベンチに座った僕の頭上に桜の枝が突き出ていた。ピンク色の庇から春の木漏れ日が降り注いできた。公園のあちら側にも桜の大木が見事に咲き誇っているし、空は澄んだ水色であった。春であった。
 隣のベンチに座った腰の曲がった小太りの老女が「ああ、これはええわあ」と嘆息していた。同感であった。

 コロッケ4個(激安スーパーで4個入りで98円だった)と、
よもぎ大福1個を食らい、シャレオツな珈琲を飲んだ。

 有名な観光地で騒がしい群衆に囲まれて眺める桜よりも、老人の独り言や幼児の笑い声が静かに聞こえる近所の名もない公園の桜の方が、華やかさはないものの、和んだ。まったりした。春だなぁ、と思った。
 意図せずしていろいろ食って腹が膨れて眠くなった僕は、ベンチに寝転がりしばし午睡に耽った。どこまでも春なのであった。

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