【社労士試験】合格証書が届いたが、なんもしてない。
目次
●社労士試験「合格証書」が届く。
2023年10月4日、第55回社会保険労務士試験のWEB合格発表があった。(↓下記の記事を参照。)
数週間後。
合格したことに満足し、社労士試験に向けての辛い勉強の記憶も薄れかけていた10月下旬ーー。
全国社会保険労務士会連合会から、封書が届いた。
大判封筒で、それなりの厚みもあった。
もちろん中身の予想はできていた。
「合格証書」だ。
厚生労働大臣の署名と押印がなされていた。
さすが国家資格。
箔がある。
とは言え、合格の事実は既知であったので、特別な感情は湧かなかった。
大学の卒業証書と同じで、ただの「証明書」にすぎない。
問題は、その証明書を「使う機会」が訪れるかだった。
社労士資格を、活かすことができるのか。
そもそも活かすつもりはあるのか。
どう活かすのか。いつ活かすのか。
そちらの方が問題だった。
この記事を書く過程で、現時点での考えをまとめようと思う。
●とりあえず「成績表」も同封されてた。
封筒には、さまざまな書類が同封されていたが、その中に1枚だけハガキがあった。
成績表だ。
残念ながら不合格となってしまった人には、このハガキだけが届くらしい。
満点でもギリギリでも「合格」に変わりないのだから、どうでもよかった。
だが、WEB合格発表では詳細な点数までは開示されていなかったこともあり、一応、確認することにした。
僕の得点は、「選択式」が30点台後半、「択一式」が50点台前半だった。
もちろん、総得点でも科目ごとの点数でも、基準点(足切り点)割れはなし。
しかし、やはり「選択式」の「厚生年金保険法」が基準点(3点)ギリギリだった。
まさに、紙一重。九死に一生。
社労士試験は、本当に、最終的には「運」である。
合格者だからこそ、自信をもって言える。
今回不合格だった方でも、選択式の科目ごとの足切りで1点、2点足りなかった程度の方ならば、今の実力をキープするだけで、来年度の試験は運次第で受かる。
つまり、得点を上げようと、勉強の範囲を広めたり、個々の論点を深堀りしたりするべきではない。それは、絶対に悪手である。
基本の頻出論点をガチガチにすることが社労士試験の必勝法だ。出るかどうか分からないマニアックな問題に取り組むべきではない。
「結局、運でしょ」という、ある種の開き直りが、最終的には肝要だろうと思う。
実力が反映されやすい「択一式」で、興味深い得点だったのは、「労働基準法」と「国民年金法」だ。
「社労士試験合格」を抱負として定めた当初の記事(↓)でも述べているように、もともと僕は、「底辺賃金労働者が身につけるべき武器」として「労働法規」を学びたかった。
そういった当初の動機からすれば、「労働基準法」で高得点を取れていないのはおかしい。
しかし結果は、「5点」。足切り点の4点を1点上回るだけである。ギリギリだったと言っていいだろう。
一方、年金科目など勉強開始時点ではどうでもよかった。興味がなさすぎた。
が、結果は、「国民年金法」で満点(10点)。
上記2科目の点数は、資格取得を目指した動機からすると、非常に矛盾した結果だ。
しかし、試験突破の観点からすれば、合理的な点数なのだ。
多くの予備校講師が言っていることは正しい。
「年金法は得点源。労働法規には深入りするな」
労働基準法をはじめとする労働法規は「消極的自由」を保障する法体系であり、行政裁量の幅が著しく狭い。設問の論点となる価値判断は、裁判所の「判例」という個別具体的な事例を用いたものが多くなり、一般化された予見可能性が相対的に低い。
一方、年金法をはじめとする社会保険は「積極的自由」を保障する法体系であり、行政が裁量で細かくルールを定められる。よほど法の趣旨から逸脱するようなことがなければ、司法によって咎められることはない。”ことなかれ主義”の行政が事前に偏執的に定めた細則を覚えることさえできれば、高得点が可能だ。
限られた試験時間内に、実質的な価値判断を行うことなど不可能。受験生ができることなど、ルールを覚えて、設問に適用することだけ。
その観点から言えば、年金法をはじめとする社会保険科目が得点が取りやすいことは明らかだった。
総得点における基準点(令和5年度は、選択式が26点、択一式が45点)を死守するにあたって、労働法規より社会保険科目を優先して勉強するのは当然なのだ。
とりあえずの僕の優先課題は、「社労士試験に合格すること」だった。
だから、興味はあっても、あえて労働法分野はさほど勉強しなかった。特に「労働基準法」「労働安全衛生法」「労働者災害補償保険法」の3つは、なかば「捨て科目」だった。「頻出かつ基本」の論点しか勉強しなかった。「雇用保険法」「労働保険徴収法」でカバーする予定だった。
一方、年金法は「やればできる」と信じ、クソほど興味なかったが勉強しまくった。
結果は、見てのとおりだ。
戦略は正しかったと言える。
●「事務指定講習」受けるか否か。
試験の結果以外にも、封筒にはいくつか書類が同封されていた。
端的に言うと、合格後、「社会保険労務士」として実際に働き始める際に必要となる書類だった。
社労士は、試験に合格しただけでは、社労士として働くことができない。
連合会が有する「名簿」に「登録」されて社会保険労務士と名乗ることができ、「独占業務」を「生業」として扱うことができる。
名簿に登録されるための要件は、大まかに言えば2つだ。
(1)試験に合格していること。
(2)下記の①②いずれかを満たしていること。
① 労務人事の実務経験が2年以上。
② 「事務指定講習」を修了。
(1)で専門家としての「知識」を担保し、(2)で「実務経験」が問われる。
職業資格である以上、知識だけあっても、実際にその業務ができないとダメなわけだ。
(2)の実務経験は、「2年以上」が必要とされる(①)。しかし、その要件を満たさない学生、新卒、他職種からの転職組も現実にはいる。
そこで、救済措置として、②の「事務指定講習」という制度が用意されている。実務経験がなくても、連合会が主催する講習を修了すればOKだ。
さて、僕であるが、「2年以上の実務経験」はあると言えばあるし、ないと言えばない。
そもそも、中小企業において、労務人事だけを専門にしている事務職などほぼいない。経理や総務、法務などと兼任していることがほとんどだ。
また、①の要件を満たすには、実務経験があることを雇用先の企業に証明してもらわねばならない。
が、僕の場合、「2年以上」という要件を満たそうとすれば、現職の会社だけでなく、すでに退職した会社にも証明書を発行してもらう必要があった。
そして、これまで退職した会社は、必ずしも円満退職ではなく、”ばっくれ”も含めて、どちらかというと、すったもんだあって辞めていた。
つまり、証明書を発行してもらうのは難しいと思われた。というか、連絡を取りたくない。
結論、「① 実務経験2年以上」という要件はすぐには満たせない。
とすれば、僕が社労士登録を目指すのであれば、2つのパターンがあった。
(1) 現在の会社で人事労務の経験を2年以上積む。
(2) 「② 事務指定講習」に申し込む。
比較検討するにあたって、「② 事務指定講習」についての案内を熟読した。
ネックとなる要因が2つ見つかった。
1つ目は、受講料が77,000円と高額であること。
ほぼ10万やがな。受講にかかる機会費用も含めると、10万どころちゃいまっせ。
ドケチな僕が、難色を示した。
2つ目は、修了日が最短で2024年の7月になることだった。
いや、長すぎ。遅すぎ。ほぼ1年やん。そんなもん「実務経験2年」を目指していくのとほとんど変わらんがな。仕事とは別に講習を受けなあかん分、手間が増えるだけやで。
怠惰な僕が、難色を示した。
「ドケチ」と「怠惰」の主張を覆すだけの、説得力ある反論は誰からも挙がらなかった。
脳内会議は静かに終了した。
すなわち、「事務指定講習」は受講せず、現在の会社で「実務経験2年」を目指す。
●結局なんもしてねえ。
というわけで、試験には合格したものの、次につながる具体的な行動はなにも選択しなかった。
で、今。
マジで、なんもしてない。
その状態が、去年の10月から1年近く続いている。
合格証書などが入った封書は、この記事を書くまで、机の引出しの奥深くにそのまま埋もれていた。
試験勉強に使ったテキストも、本棚にしまわれたまま。誇張なく、1度も開いていない。
●知識が抜け落ちていく。
当然のことながら、試験勉強で蓄えたもろもろの知識は、今ではもう、おぼろげだ。
あれほど細部までクッキリと認識していた事柄が、霞がかかったかのようにぼんやりしている。細部はもちろん、全体像さえはっきりしなくなってきた。
結局のところ、実務で使う知識など、膨大な社労士試験の範囲のごく一部。
自分の会社のパターンに限っていいのなら、30分の1程度の知識で十分というのが体感だ。残りの30分の29は使っていない。
使わない知識が抜けていくのは、自然の理。
不要なものをいつまでも蓄えておけるほど、人間の脳の容量は大きくない。
必死に脳ミソにこびりつけた知識が、耳の穴からぽろぽろと零れ落ちている。
一度は確かに獲得した知識が、失われ続けている。
現在進行形で。
●ドケチ精神を発揮するとき。
いやいや、いやいや、ちょい待て、もったいないわ。
もったいない、もったいない、もったいなああぁぁあああい!
ドケチの僕が、狂乱して叫ぶ。
脚の骨が折れるほどの勢いで、地団駄を踏む。
試験合格に何時間かけた、思とんねん!
んなもん、いちいち測ってへんから知らんけど、測って記録する時間がもったいないくらい、根つめて勉強したっちゅうねん!
どんだけ時間っちゅうコストかけた思てんねん、どんだけ苦労した思てんねん!
そんな簡単に、忘れて、手放して、たまるかい!
ドケチの僕が顔を真っ赤にして叫ぶ。
その迫力に、脳内会議に参加した他の僕はみな、押し黙った。
まったくもって当然の意見でもあったので、誰も異議を唱えられなかった。
サンクコストなんて概念は知らない。
なにがなんでも社労士試験で得たものを活用してやる。
●当面の解決策を考える。
社労士試験を通じて手に入れたものは、2つ。
「資格」と「知識」だ。
両方を活用することができればベスト。
いずれか一方を活用することができればベター。
いずれも活用することができない事態が最悪。
○社労士事務所への転職、社労士の副業を「検討」する(モチベーションの維持)。
まず、「資格」から考えよう。
社労士試験合格を目指すことにした当初の記事でも述べているが、資格による経済的恩恵は元からあまり期待していない。
会社の就業規則を熟読したが、社労士の資格手当はなかった。また、評価(昇格・昇給)にもさほど影響しなさそう。(明らかにオーバースペックで不要な資格なので。)
そうすると、「資格」からなにか具体的な恩恵を受けようとすれば、まず、「転職」がひとつの選択肢として考えられる。
しかし、30代後半の未経験者が社会保険労務士事務所へ転職するとなると、多くの場合、給与が下がる。事業会社の新卒の給与とさほど変わらない。
小規模な法人・事務所が多いし、そもそも独立を念頭に置いている人が修行のために働くことが多いらしい。
他の事業会社へ「総務人事職」としてキャリアアップのために転職するというのはどうか。
こちらは、待遇の向上を図るならば、社労士事務所よりも一層幅広い経験が問われる(マネジメント、採用、教育等)。
そういった経験はない(事務経験しかない)ので、難しそうだ。
現時点では、メリットの小ささや、その難易度からして、積極的に転職活動を行う理由がない。
だが、それはあくまで「現時点」の話だ。
将来的に、今の会社を辞めざるを得ない状態におちいる可能性がないとは言い切れない。というか、その可能性は決して低くはない。
無職になったら、否応なく、転職活動(独立開業含む)を始めざるを得ない。
また、定年を迎えたならば、基本的に今の会社は辞める必要がある。
その後は年金生活に突入するわけだが、ニートやフリーターの期間があったし、今の給与も決して高いわけではないので、将来もらえる年金はスズメの涙だ(試験勉強で得た知識を用いて自分で計算したら、めっちゃ少なかった)。
年金という必要最小限の収入はあるわけだから、セカンドキャリアとして「社労士業」を始めるリスクは低い。というか、始めないともったいない気がする。たぶん、すると思う。
以上のように、「現時点では」転職はしないが、「将来的に」転職する可能性は高い。
このことを意識しているだけでも、ポジティブな行動に対する動機付けになる。モチベーションの維持につながる。
次に、現時点において転職はなかなかハードルが高いが、「副業」ならばわりと手軽に始められるのではと考えている。
まだ詳細に調べたわけではないので、なんとも言えないが、できそうな気がする。
気だけはしている。
いずれにせよ、上述したように現時点では無資格者なので、開業が前提の副業はまだできない。
しかし、数年のうちに名簿登録の要件(実務経験2年)を満たす可能性は高いので、その後を見据え、「社労士としての副業」の道を探っておきたい。
資格取得による経済的恩恵は期待していないが、期待を持ち続けたほうがモチベーションの維持につながるので、「検討」だけは不断なく続けていく。
○このブログを最大限に活用する(記憶の維持)。
なにが一番もったいないかって、せっかく手に入れた「知識」が抜け落ちていくことだ。
社労士試験に限らず、興味のあることを時間をかけて学んでも、今のように漫然と放置していると、その知識はどんどん劣化していく。
いざ使おうと思ったときには、サビついていて使いものにならない(他の資格で経験済)。
それは、是が非でも避けたい(今の仕事や、転職・副業の際に使うかもしれないので)。
知識の喪失を防ぐために、もっとも効率的な手法は「アウトプット」だ。もはやインプットではない。
最強の勉強法が「その事柄を他人に分かりやすく教えてみること」というのは、広く知られた事実だ。
他人に分かりやすく教えるためには、その事柄について、自分の中で知識が整理されていなければならない。
体系的、比較対照、時系列、因果律ーー。用いる関係性はなんでもいいのだが、個々の知識がぽつぽつと点在するのではなく、有機的につながって整理されてこそ、門外漢の他者にその事柄を分かりやすく説明することができる。
整理された知識は、強い。ひとつの知識を思い出せば、芋づる式に関連する知識も思い出すことができる。
アウトプット先(媒体)は、このブログを用いることにする。
「架空の他者」を想定してオフライン上の媒体(ノートとか)に知識を整理していってもいいのだが、しかし、オンライン上に公開することで、「現実の他者」の目を意識せざるを得なくなり、「下手なものは出せないぞ」というプレッシャーを自分に課すことになり、結果として、「知識の整理」の精度が上がると考えた。
「社会保険労務士」に関連する知識といっても、幅広い。
とりあえずは、下記の3点に絞って記事を書いて(知識を整理して)いきたい。
・社労士試験の「独学合格体験記」を詳細に書く。
まずは試験勉強のまとめだ。
「試験で問われる知識」と「実務に必要な知識」は上述したようにわりと乖離しているが、試験勉強で得た知識は最初から体系化されていることが多いし、一度は確実に身につけた知識なので記事にしやすい。
・「総務人事の実務」について自分なりにまとめて書く。
現況必要なのは「実務で使える知識」なので、実務の観点から記事を書いていきたい。
「よく使う」知識について、「すぐに使える」形式で記事を書くことを心がけたい。それが自分のためにもなる。
・「労働問題」について調べて自分なりにまとめて書く。
この記事を書くにあたって、社労士試験合格を志した最初の記事を読み直してみたのだが、僕の当初の目的のひとつは「ブラック企業をシバき倒す」ことにあった。
試験に合格し、本当に自分の興味のある分野を勉強することができるようになったのだから、それをしたい。
つまり、試験勉強中はおざなりにしていた労働法分野を、判例や細かい通達含めて、調べてまとめたい。
○関連分野の資格をとる(勉強の継続)。
定年前に失職した場合、早期に再就職を目指す必要がある。
アラフォーの中年男性が「社労士」含め複数の資格を持っていたって、実務経験がなければ就職は非常に厳しいことは承知している。
しかし、社労士の周縁分野の資格に関して言えば、今の僕ならさほど苦労せずに取得することができる。
コストが極めて低いので、将来的に役立つかは疑わしいが、取得しておいてもいいだろうと考えている。
試験勉強の過程で、知識の喪失もある程度防ぐことができるだろう。
以上、「社労士資格」に対する現状の僕の考えをまとめた。
実行に移せるかどうかは微妙。